木造に比べると建築費用が高くなりやすいRC住宅。お金をかけるだけにメンテナンス費用なども事前に把握しておきたいところです。
結論から述べれば、木造に比べて耐用年数は2倍を超えています。建物の寿命はどのような素材よりも優れており、一度立てれば後世まで長く残り続ける建築物です。
一方で、完全にメンテナンスが不要になるわけではありません。例えば、屋上の防水の劣化など補修が必要になる場合もあります。
この記事では、RC住宅のメンテナンスについてまとめていきます。
建築物の基礎知識
1:法定耐用年数について
インターネットで、コンクリート住宅の寿命を調べると、すぐに「法定耐用年数」という言葉が出てきます。
法定耐用年数とは、国税庁が、「資産の種類」「構造」「用途」別に耐用年数を詳細に定めた耐用年数のことを言います。
これは、納税額に関係する重要な耐用年数の指標のひとつとなります。
住宅用の建物については、主要建材によって以下のとおり、法定耐用年数が規定されています。
●木造、合成樹脂造―22年
●木骨モルタル造―20年
●鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造、RC造―47年
●れんが造、石造、ブロック造―38年
●金属(鉄骨)造―34年
ご覧のとおり、木造に比べRC造は2倍を超え、他のどの素材よりも法定耐用年数は長くなっています。資産価値が落ちにくいと言われる所以はここになります。
2:では、実際の寿命は?
法定耐用年数は、実際の建物の「寿命」とは異なることに留意してください。
木造が22年で、RC造が47年で、突然崩れてしまうわけでも、住めないほど劣化するわけでもありません。とはいえ、統計データに基づく年数であり、適当に決めたものでもありません。
ある研究結果によると、コンクリート住宅の実際の寿命について下記のような結果が発表されています。
68年 :建物の完成後、残存率が50%となるまでの年数(小松幸夫教授ら、2011)
117年 :物理的寿命(飯塚裕、1979)
120年 :コンクリートの中性化から算出した物理的効用持続年数(大蔵省主税局、1951)
150年 :外装仕上をした場合の延命年数(大蔵省主税局、1951)
つまりコンクリート住宅の実際の寿命は、法定耐用年数に比べて、はるかに長いのです。
劣化する部分は定期的にメンテナンスし、数十年のスパンでリノベーションを行えば、100年は住めると考えられています。
3:RC造の寿命を伸ばすメンテナンス
先に述べたとおり、RC造はメンテナンスフリーな訳ではありません。コンクリートの耐用年数は長いですが、それもメンテナンスあってのものです。
コンクリート住宅、いわゆる鉄筋コンクリート住宅ですが、鉄筋が錆びなければ、コンクリート自体が劣化するまで、寿命があるわけです。つまりコンクリート住宅は、鉄筋を錆びさせなけばいいわけで、下記の3点に対して、メンテナンスを行えばよいことになります。
- ひび割れをさせない
- 中性化を遅らせる
- ASR、塩害、凍結融解による凍害を生じさせない
では、コンクリートならではの痛みとはどのようなものがあるのかみていきましょう。
4:コンクリート住宅のトラブルなど
屋上防水
雨をまともに受ける屋上は、雨漏りを防止するため防水処理が施されています。防水処理方法は、アスファルト、シート、ウレタン塗膜防水などありますが、いずれも何十年ももつものではありません。劣化の程度に応じて、部分補修などが必要となります。
コンクリートの欠落
ひび割れなどがあるとコンクリート内部に雨水が侵入し、鉄筋の腐食を招きます。腐食に伴い鉄筋は膨張して、コンクリートを押し出し、結果として外壁部分が欠落します。
コンクリートのクラック
コンクリートは、長い年数をかけてわずかに収縮や膨張をしていきます。
これによって、コンクリート壁面にクラック(亀裂)が生じます。非常に細いクラックであれば、構造面ではさほど問題ありません。これが名刺を差し込めるほどの幅であれば、雨水が内部に浸透するため、補修する必要が出てきます。
外壁塗装・鉄部塗装
下地の劣化を防止するため塗装が施されていますが、この塗装自体が十数年で耐用年数を迎えます(鉄部塗装は、通常はもっと早くに劣化)。そのままにしておけば、美観だけでなく、下地が外部環境の悪影響を受け始めますので、塗り直しが必要です。
4.まとめ
コンクリート住宅の本当の寿命について、考えてみました。
実際のところ、コンクリートのような耐久性のある材料で、寿命まで使用した建物はほとんどありません。
コンクリートは、設計プラン(スケルトン・インフィル)の考え方もありますが、ひび割れ、外壁の塗装、屋上防水などのメンテナンスさえきちんと行えば、何世代も使用できる構造です。
またメンテナンスは、被害が起きる前に行うので、一見、後回しになりがちですが、定期的なメンテナンスを行うことで、結局は、寿命を長くし、トータルコストが少なくて済みます。
コンクリート住宅のよさを知り、是非、検討の一つにいれてください。